かにかくに物は思はじ飛騨人の
打つ墨縄のただ一道に
- 歌の意味
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あれこれと物思いはすまい。飛騨の工匠が打つ墨縄のように、ただ一筋に。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2648
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
あれこれと思い迷うことはすまい、飛騨の工匠が打つ墨縄の線のように、ただ一筋にあなたを思おうと、ひたむきな恋心を誓った歌である。真っすぐに引かれる墨縄の線に寄せて、迷いのない一途な心を鮮やかに言い表している。
三句と四句は、飛騨の工匠が材木に墨縄を打って引くまっすぐな線を表し、「ただ一道に」を導く序詞である。飛騨の工匠は古くから腕の良い大工として知られ、都の造営にも召し出された。前歌までの網や布に続いて、木工の道具である墨縄に寄せた一首であり、女性の歌とみる説がある。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「かにかくに」は、あれこれと、とやかくとの意である。思い迷う心のさまを表す句である。
二句「物は思はじ」は、物思いはすまいの意である。「じ」は打消意志の助動詞で、ここで句切れとなる。結句の「ただ一道に」が二句を受けて意味を補う倒置の構成となっている。
三句「飛騨人の」は、飛騨国(今の岐阜県北部)の人で、ここでは腕の良い大工として知られた飛騨の工匠を指している。
四句「打つ墨縄の」は、材木にまっすぐな線を引くために打つ墨縄の、の意である。三句とともに序詞となり、次の「ただ一道に」を導いている。
結句「ただ一道に」は、ただ一筋にの意である。墨縄の直線と一途な心とを重ね、二句の「物は思はじ」にかえって歌を結んでいる。
ひだひと:飛騨国の人、特に腕の良い大工として知られた飛騨の工匠
すみなは:墨壺から引き出し、材木に直線を引くのに用いる墨を含ませた糸
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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手作りを空ゆ引き越し遠みこそ 目言離るらめ絶ゆと隔てや
- 次の歌
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あしひきの山田守る翁が置く鹿火の 下焦れのみ我が恋ひ居らむ