馬の音のとどともすれば松蔭に
出でてぞ見つるけだし君かと
- 歌の意味
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馬の足音がとどと響くたびに、松の木陰に出て見たことだ。もしやあなたかと思って。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2653
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
馬の足音が聞こえるたびに、もしや恋人が来たのではないかと松の木陰に出て見たと、恋人の訪れを待ちわびる女性の心を詠んだ歌である。足音に耳を澄まし、そのたびに外へ出てみるしぐさを通して、待つ身の切なさを生き生きと描いている。
前歌の放れ駒に続いて馬に寄せた一首であり、次歌も眠れぬ明け方に聞こえる馬の足音を詠んでいる。本歌が恋人かと期待して出て見る歌であるのに対し、次歌は恋人でない誰かの馬の音を恨む歌で、期待と落胆とが対をなす配列となっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「馬の音の」は、馬の足音がの意である。六音の字余りの句である。
二句「とどともすれば」は、とどと音がするたびにの意である。「とど」は馬の足音を表す擬音語で、「すれば」は、…するといつもの意を表している。
三句「松蔭に」は、松の木陰にの意である。「松」に「待つ」の意を響かせているとみる説がある。
四句「出でてぞ見つる」は、出て見たことだの意である。係助詞「ぞ」を受けて完了の助動詞「つ」が連体形「つる」で結ぶ係り結びで、ここで句切れとなる。
結句「けだし君かと」は、もしやあなたかと思っての意である。「けだし」はもしかしたらの意で、四句と倒置の関係にあり、出て見た理由を後から示している。
まつかげ:松の木の陰
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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妹が髪上げ竹葉野の放れ駒 荒びにけらし逢はなく思へば
- 次の歌
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君に恋ひ寐ねぬ朝明に誰が乗れる 馬の足の音ぞ我れに聞かする