君に恋ひ寐ねぬ朝明に誰が乗れる
馬の足の音ぞ我れに聞かする
- 歌の意味
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あなたを恋しく思って眠れなかった明け方に、誰が乗っている馬の足音なのか、私に聞かせるのは。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2654
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
あなたを恋しく思って一睡もできなかった明け方に、いったい誰の乗る馬の足音を私に聞かせるのかと、恋人ではない馬の足音に心を乱された女性の嘆きを詠んだ歌である。待ち明かした夜の果てに聞こえた足音が恋人のものではなかった落胆と、恨めしさを表している。
前歌に続いて馬の足音に寄せた一首である。前歌が足音を恋人かと期待して出て見る歌であるのに対し、本歌はその足音が恋人のものではないと知った落胆を詠み、両首は期待と失望とで対をなしている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「君に恋ひ」は、あなたを恋しく思っての意である。眠れなかった理由を示している。
二句「寐ねぬ朝明に」は、眠れなかった明け方にの意である。「寐」は眠ること、「朝明」は夜明け方をいう。
三句「誰が乗れる」は、誰が乗っているの意である。疑問の語「誰」が、恋人ではない者への恨めしさを含んでいる。
四句「馬の足の音ぞ」は、馬の足音をの意である。「足」を「あ」と読む八音の字余りの句で、係助詞「ぞ」が結句の連体形と呼応している。
結句「我れに聞かする」は、私に聞かせるのかの意である。使役の助動詞「す」の連体形「する」で、四句の「ぞ」を受けて結ぶ係り結びとなっている。
い:眠ること
あさけ:夜明け方
あ:足
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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馬の音のとどともすれば松蔭に 出でてぞ見つるけだし君かと
- 次の歌
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紅の裾引く道を中に置きて 我れは通はむ君か来まさむ