紅の裾引く道を中に置きて
我れは通はむ君か来まさむ
- 歌の意味
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紅の裳裾を引いて歩く道を二人の間に置いて、私の方から通って行こうか。それともあなたが来てくださるだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2655
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
二人の間を隔てる道を前にして、紅の裳裾を引いて私の方から通って行こうか、それともあなたが来てくださるのかと、逢瀬への思いを問いかけた女性の歌である。鮮やかな紅の裳裾を引くわが身の姿を描き出し、自ら通って行こうとするほどの恋心を表している。
なお原文には「一云 裾漬く川を」「又曰 待ちにか待たむ」という異伝が注記されている。異伝では道ではなく裾を濡らす川を間に置き、結句も待ちに待とうかとなるが、ここでは本文の「裾引く道を」「君か来まさむ」を採った。また本文の四句は「我れは通はむ」とあり、読み仮名の行の「われかかよはむ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。前歌までの馬の歌に続き、通い路の道に寄せた一首である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「紅の」は、紅色のの意で、次の「裾」を彩り、女性の裳の鮮やかな色を示している。
二句「裾引く道を」は、裳裾を引いて歩く道をの意である。女性が自ら歩いて行く道の姿を描いている。
三句「中に置きて」は、二人の間に置いての意である。六音の字余りの句で、道を隔てとして間にはさむことをいう。
四句「我れは通はむ」は、私の方から通って行こうの意である。「む」は意志の助動詞で、次の「君か来まさむ」と対になる。
結句「君か来まさむ」は、あなたが来てくださるだろうかの意である。係助詞「か」が疑問を表し、尊敬の「ます」に推量の「む」が付いた「来まさむ」で結んでいる。
すそ:衣の裾、ここでは女性の裳の裾
かよふ:恋人のもとへ行き来する
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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君に恋ひ寐ねぬ朝明に誰が乗れる 馬の足の音ぞ我れに聞かする
- 次の歌
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天飛ぶや軽の社の斎ひ槻 幾代まであらむ隠り妻ぞも