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妹が目の見まく欲しけく夕闇の
木の葉隠れる月待つごとし

歌の意味
妻に逢いたいと思う気持ちは、夕闇の中で木の葉に隠れている月を待つようなものだ。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2666

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 恋人に逢いたいと待ち焦がれる心を、夕闇の中、木の葉に隠れてなかなか姿を見せない月を待つ思いにたとえた歌である。見えそうで見えない月のもどかしさが、逢えない恋の切なさとよく重なっている。
 月に寄せる歌の一首で、上の句で思いを述べ、下の句で月にたとえる構成をとっている。月を待つという趣向は、次歌の第二千六百六十七首で君を待つうちに月が傾く歌へと続いてゆく。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「妹が目の」は、恋人の目、すなわち恋人の姿や恋人に逢うことをいう。「目」は万葉集の恋の歌でしばしば逢うことを表す語である。
 二句「見まく欲しけく」は、見たいと思うことは、の意である。「見まく」は「見む」のク語法、「欲しけく」は形容詞「欲し」のク語法で、名詞のようにまとめて下に続けている。
 三句「夕闇の」は、月の出がまだ遠い夕方の暗さをいう。月を待つ時間帯を示し、待ち遠しさを強めている。
 四句「木の葉隠れる」は、木の葉に隠れている、の意である。「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、月が葉陰に隠れたままでいるさまを表している。
 結句「月待つごとし」は、月を待つようなものだ、の意である。比況の助動詞「ごとし」で一首をたとえとしてまとめ上げている。

いも:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
め:目。ここでは相手の姿、また相手に逢うこと
出典
万葉集
前の歌
月しあれば明くらむ別も知らずして 寝て我が来しを人見けむかも
次の歌
真袖持ち床うち掃ひ君待つと 居りし間に月かたぶきぬ