真袖持ち床うち掃ひ君待つと
居りし間に月かたぶきぬ
- 歌の意味
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両袖で寝床を払い清め、あなたを待つとて座っていたうちに、月は傾いてしまった。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2667
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
両袖で寝床の塵を払って恋人を待っていたのに、とうとう訪れのないまま月が西に傾いてしまったと嘆く、女性の立場の歌である。床を払うしぐさに迎える喜びと期待が込められ、それが空しく過ぎた夜の長さが結句の月に託されている。
月に寄せる歌の一首で、前歌が月を待つ心を恋人を待つ心にたとえたのに対し、本歌は恋人を待つうちに月が沈んでゆくさまを詠み、待つことの時間の長さを月の動きで示している。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「真袖持ち」は、両方の袖で、の意である。「真」は完全にそろっていることを表す接頭語である。
二句「床うち掃ひ」は、寝床の塵を払い清めて、の意である。恋人を迎える支度を整えるしぐさで、待つ女性の心の弾みがうかがえる。
三句「君待つと」は、あなたを待つとて、の意である。格助詞「と」が待つという目的、心づもりを表している。
四句「居りし間に」は、座っていたうちに、の意である。「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、待ち続けた時間の経過を示している。
結句「月かたぶきぬ」は、月が傾いてしまった、の意である。完了の「ぬ」で結び、夜がふけて訪れのなかったことを、月の様子だけで言い表している。
まそで:左右の両袖
かたぶく:傾く。ここでは月が西に沈みかかる意
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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妹が目の見まく欲しけく夕闇の 木の葉隠れる月待つごとし
- 次の歌
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二上に隠らふ月の惜しけども 妹が手本を離るるこのころ