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二上に隠らふ月の惜しけども
妹が手本を離るるこのころ

歌の意味
二上山に隠れてゆく月が惜しいように名残惜しいけれども、妻の手枕から離れて過ごしているこの頃である。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2668

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 二上山に沈んでゆく月を惜しむように、恋人と離れていることを惜しく思いながらも、妻の手枕を離れて過ごさねばならないこの頃を嘆く歌である。沈む月への愛惜を、共寝のできない寂しさに重ねている。
 月に寄せる歌の一首で、前歌の傾く月に続き、本歌では山に隠れてゆく月が詠まれている。二上山は大和と河内の境にそびえる山で、大和の側から見ると西にあり、月の沈む方角の山である。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「二上に」は、二上山にの意である。雄岳と雌岳の二つの峰をもつ山で、大和から見て西に位置する。
 二句「隠らふ月の」は、隠れてゆく月のように、の意である。「隠らふ」は「隠る」に継続を表す「ふ」が付いた形で、ゆっくり沈んでゆくさまを表す。初句からここまでが「惜し」を導く序詞である。
 三句「惜しけども」は、惜しいけれども、の意である。形容詞「惜し」の古い已然形「惜しけ」に「ども」が付いた逆接の形である。
 四句「妹が手本を」は、妻の手首のあたり、すなわち共寝の手枕をいう。共寝を思わせる語で、離れている寂しさを際立たせている。
 結句「離るるこのころ」は、離れているこの頃である、の意である。名詞「このころ」で終わる体言止めで、続く日々の嘆きを余韻として残している。

ふたかみ:二上山。大和と河内の境にある山
たもと:手首のあたり、腕。ここでは共寝の手枕
かる:離れる、遠ざかる
出典
万葉集
前の歌
真袖持ち床うち掃ひ君待つと 居りし間に月かたぶきぬ
次の歌
我が背子が振り放け見つつ嘆くらむ 清き月夜に雲なたなびき