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今夜の有明月夜ありつつも
君をおきては待つ人もなし

歌の意味
今夜の有明の月夜のように、このままずっと、あなたをさしおいて待つ人など私にはいない。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2671

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 今夜の有明の月が夜明けまで空にあり続けるように、このままいつまでも、あなた以外に待つ人はいないと、相手への変わらぬ心を誓う、女性の立場の歌である。夜明けまで残る月の姿に、一人の人を待ち続ける心を重ねている。
 月に寄せる歌の一首で、上の句の「有明月夜」から「ありつつも」へと同じ音を重ねて言い継ぐ、万葉集らしい序詞の技法が用いられている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「今夜の」は、今夜の、の意で、四音の字足らずである。今まさに見ている月であることを示している。
 二句「有明月夜」は、夜明けになっても空に残る月をいう。初句とともに序詞となり、「あり」の音の繰り返しによって三句の「ありつつも」を導いている。
 三句「ありつつも」は、このままずっと、の意である。動詞「あり」に継続の「つつ」と強調の「も」が付いた形で、二句の「有明」と音を響かせている。
 四句「君をおきては」は、あなたをさしおいては、の意である。係助詞「は」で、相手以外の人を取り立てて打ち消す働きをしている。
 結句「待つ人もなし」は、待つ人などいない、の意である。形容詞「なし」で言い切り、一途な思いをきっぱりと示している。

ありあけ:月が空に残ったまま夜が明けること、またそのころ
おく:さしおく、除く
出典
万葉集
前の歌
まそ鏡清き月夜のゆつりなば 思ひはやまず恋こそまさめ
次の歌
この山の嶺に近しと我が見つる 月の空なる恋もするかも