佐保の内ゆあらしの風の吹きぬれば
帰りは知らに嘆く夜ぞ多き
- 歌の意味
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佐保の里のうちから嵐の風が吹いてくるので、帰りのこともわからないまま嘆く夜が多い。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2677
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
佐保の里のうちから激しい嵐が吹いてくる夜には、あの人の帰りもわからないまま嘆き明かすことが多いと詠んだ、女性の立場の歌と解されている。荒れた夜の風の音が、待つ身の不安と寂しさをかき立てている。
前歌までの雲に寄せる歌に続き、本歌から風に寄せる歌が並ぶ。「あらし」の語は本巻の第二千六百七十九首にも見え、嵐の夜に恋人を思う趣向を共有している。なお四句の原文「還者胡粉」は、白い顔料の胡粉を「しら」と読ませる用字とされるが、句の訓みと解釈には諸説がある。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「佐保の内ゆ」は、佐保の里のうちから、の意である。佐保は奈良の都の北東、佐保川の流域の地で、格助詞「ゆ」が起点を表している。
二句「あらしの風の」は、嵐の風が、の意である。山から激しく吹きおろす風をいう。
三句「吹きぬれば」は、吹いてくるので、の意である。完了の「ぬ」の已然形に「ば」が付いて、理由または恒常的な条件を表している。
四句「帰りは知らに」は、帰りのこともわからずに、の意である。「知らに」は打消の古い連用形「に」を用いた形で、嵐の夜に先の見通せない心細さを表している。
結句「嘆く夜ぞ多き」は、嘆く夜が多いことだ、の意である。係助詞「ぞ」を受けて形容詞「多し」の連体形「多き」で結ぶ係り結びで、嘆きの夜の重なりを強調している。
さほ:奈良の都の北東、佐保川流域の地
あらし:山から激しく吹きおろす風
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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ひさかたの天飛ぶ雲にありてしか 君をば相見むおつる日なしに
- 次の歌
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はしきやし吹かぬ風ゆゑ玉櫛笥 開けてさ寝にし我れぞ悔しき