はしきやし吹かぬ風ゆゑ玉櫛笥
開けてさ寝にし我れぞ悔しき
- 歌の意味
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ああ、吹いても来ない風のために、戸を開けたまま寝てしまった私が悔しい。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2678
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
吹いて来るはずもない風のために戸を開けて寝てしまった自分が悔しいと嘆く、女性の立場の歌である。訪れて来ない恋人を「吹かぬ風」にたとえ、来るかもしれないと期待して戸を開けて待っていた自分の愚かさを悔やんでいる。
風に寄せる歌の一首で、前歌が嵐の吹く夜の嘆きを詠んだのに対し、本歌は吹かない風を詠んでおり、吹く風と吹かぬ風とが対をなしている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「はしきやし」は、もとは愛すべきの意の語で、ここでは「ああ」と嘆息する感動の語として用いられている。歌の冒頭で嘆きを打ち出している。
二句「吹かぬ風ゆゑ」は、吹いても来ない風のために、の意である。来ない恋人をたとえたもので、「ゆゑ」は原因を表している。
三句「玉櫛笥」は、櫛などを入れる美しい箱の意で、ふたを開けることから「開け」にかかる枕詞である。
四句「開けてさ寝にし」は、戸を開けて寝てしまった、の意である。「さ寝」の「さ」は接頭語で、完了の「ぬ」の連用形「に」に過去の「き」の連体形「し」が付いている。
結句「我れぞ悔しき」は、私が悔しい、の意である。係助詞「ぞ」を受けて形容詞「悔し」の連体形「悔しき」で結ぶ係り結びで、自らを責める思いを強めている。
たまくしげ:櫛などを入れる美しい箱。「開く」「ふた」などにかかる枕詞
さぬ:寝る。「さ」は接頭語
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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佐保の内ゆあらしの風の吹きぬれば 帰りは知らに嘆く夜ぞ多き
- 次の歌
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窓越しに月おし照りてあしひきの あらし吹く夜は君をしぞ思ふ