我が背子が使を待つと笠も着ず
出でつつぞ見し雨の降らくに
- 歌の意味
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私の夫からの使いを待つとて、笠もかぶらずに、何度も外へ出ては見たことだ。雨が降っているのに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2681
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
夫からの便りを届ける使いを待ちわびて、雨が降っているのに笠もかぶらず何度も外に出て見たと詠んだ、女性の立場の歌である。雨に濡れるのもかまわず待つしぐさに、便りを待ち焦がれる心がよく表れている。
前歌の霧に寄せる歌に続き、本歌から雨に寄せる歌が並ぶ。次歌の第二千六百八十二首とは、ともに結句に雨を置き、係助詞「ぞ」を過去の助動詞「き」の連体形「し」で結ぶ形を共有しており、雨の日に恋人を待つ女性の心を詠む点でも対をなしている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「我が背子が」は、私の夫が、の意である。「背子」は女性が夫や恋人を親しんで呼ぶ語である。
二句「使を待つと」は、使いを待つとて、の意である。「使」は恋人の便りを届ける使者をいう。
三句「笠も着ず」は、笠もかぶらずに、の意である。係助詞「も」が、雨具の用意さえ忘れるほどの心のはやりを示している。
四句「出でつつぞ見し」は、何度も外へ出ては見た、の意である。「つつ」は動作の繰り返しを表し、係助詞「ぞ」を受けて過去の助動詞「き」の連体形「し」で結ぶ係り結びとなっている。
結句「雨の降らくに」は、雨が降っているのに、の意である。「降らく」は「降る」のク語法で、四句の後に置かれた倒置となっている。
せこ:女性が夫や恋人を親しんで呼ぶ語
つかひ:恋人の便りを届ける使者
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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川千鳥棲む沢の上に立つ霧の いちしろけむな相言ひそめてば
- 次の歌
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韓衣君にうち着せ見まく欲り 恋ひぞ暮らしし雨の降る日を