彼方の埴生の小屋に小雨降り
床さへ濡れぬ身に添へ我妹
- 歌の意味
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遠くの粗末な土の小屋に小雨が降って、寝床までも濡れてしまった。私の身に寄り添っておくれ、わが妻よ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2683
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
遠くの粗末な土の小屋に小雨が降り込み、寝床まで濡れてしまったので、身を寄せ合おうと恋人に呼びかける男性の歌である。わびしい住まいの雨の夜を嘆くよりも、それを口実に寄り添うことを願う、素朴で温かな恋の情景が詠まれている。
雨に寄せる歌の一首で、前の二首が雨の日に恋人を待つ女性の歌であったのに対し、本歌は雨の夜に恋人と共にいる男性の歌であり、待つ側と共にいる側とが対照をなしている。なお初句の「彼方」は遠方の意とも、地名とする説もある。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「彼方の」は、あちらの、遠方の、の意である。小屋が人里から離れた所にあることを思わせる。
二句「埴生の小屋に」は、土を塗った、あるいは土間のままの粗末な小屋に、の意である。住まいのわびしさを示している。
三句「小雨降り」は、小雨が降って、の意である。連用形で下に続け、四句の結果を導いている。
四句「床さへ濡れぬ」は、寝床までも濡れてしまった、の意である。副助詞「さへ」が添加を表し、完了の「ぬ」で言い切る四句切れである。
結句「身に添へ我妹」は、私の身に寄り添え、わが妻よ、の意である。動詞「添ふ」の命令形に呼びかけの「我妹」を続けた体言止めで、親しみを込めて結んでいる。
をちかた:あちらの方、遠方
はにふ:赤土などの粘土。「埴生の小屋」は土を塗った粗末な小屋
そふ:寄り添う
わぎも:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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韓衣君にうち着せ見まく欲り 恋ひぞ暮らしし雨の降る日を
- 次の歌
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笠なしと人には言ひて雨障み 留まりし君が姿し思ほゆ