妹が門行き過ぎかねつひさかたの
雨も降らぬかそをよしにせむ
- 歌の意味
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恋しい人の家の門を、通り過ぎることができない。雨でも降ってくれないものか。それを口実にしよう。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2685
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
恋しい人の家の門前を素通りできず、雨でも降れば雨宿りを口実に立ち寄れるのにと願う男の歌である。人目を気にして堂々と訪ねられない男の、ためらいともどかしさが率直に詠まれている。
雨に寄せる一連の歌で、前歌では女が、雨を口実に留まった男の姿を思い出していた。本歌は男の側から雨を口実に求めており、待たれる側と訪ねる側、回想と願望とが向かい合う配列となっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「妹が門」は、恋しい人の家の門の意である。「妹」は男が恋人を親しんで呼ぶ語で、男の歌であることがわかる。
二句「行き過ぎかねつ」は、通り過ぎることができないの意である。「かね」は動詞の連用形に付いて、しようとしてできない意を表し、「つ」は完了の助動詞で、ここで句切れとなる。
三句「ひさかたの」は「雨」にかかる枕詞である。天の意をもつ語で、「天」「雨」「月」などを導く。
四句「雨も降らぬか」は、雨でも降らないものかの意である。「ぬか」は打消の助動詞「ず」の連体形に係助詞「か」が付いた形で、願望を表す。ここで二度目の句切れとなる。
結句「そをよしにせむ」は、それを口実にしようの意である。「そ」は雨を指し、「よし」は理由、口実の意、「む」は意志の助動詞である。
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
よし:理由、口実
ひさかた:天の意。「ひさかたの」の形で「天」「雨」などにかかる枕詞となる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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笠なしと人には言ひて雨障み 留まりし君が姿し思ほゆ
- 次の歌
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夕占問ふ我が袖に置く白露を 君に見せむと取れば消につつ