白栲の我が衣手に露は置き
妹は逢はさずたゆたひにして
- 歌の意味
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私の袖には露が置き、それなのにあの子は逢ってくださらない。ためらってばかりいて。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2690
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
夜露に袖を濡らしながら待っているのに、恋しい人はためらうばかりで逢ってくれないと嘆く歌である。「妹」と呼んでいることから男の歌と見られ、外に立ち尽くす男のやるせなさが詠まれている。
露に寄せる一連の歌で、本巻の第二千六百八十八首とは「白栲の我が衣手に露は置き」の句をほぼ共有する。そちらでは女が露に濡れても内に入るまいと男を待っていたが、本歌では男が露に濡れて女を待っており、待つ側と待たれる側とが反転した構図となっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「白栲の」は「衣手」にかかる枕詞である。白い布を表す白栲によって、露の置く袖の白さも思わせる。
二句「我が衣手に」は、私の袖にの意である。「衣手」は袖のことである。
三句「露は置き」は、露が置いての意で、連用形で次へと続けている。長く外に立ち続けて夜が更けたことを示す。
四句「妹は逢はさず」は、あの子は逢ってくださらないの意である。「さ」は尊敬の助動詞「す」の未然形で、女に敬意を表すことで、思うにまかせない相手へのもどかしさを含ませている。
結句「たゆたひにして」は、ためらっていての意である。「たゆたふ」は心が定まらず揺れ動くことをいう動詞で、女の迷う心を表している。「にして」で言いさし、余情を残している。
たゆたふ:心が定まらず揺れ動く、ためらう
ころもで:袖
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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朝露の消やすき我が身老いぬとも またをちかへり君をし待たむ
- 次の歌
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かにかくに物は思はじ朝露の 我が身ひとつは君がまにまに