かにかくに物は思はじ朝露の
我が身ひとつは君がまにまに
- 歌の意味
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あれこれと物思いはするまい。朝露のようにはかない我が身ひとつは、あなたの心のままに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2691
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
あれこれと思い悩むのはやめよう、朝露のようにはかない我が身はすべてあなたにお任せすると、恋人に身をゆだねる女の歌である。迷いを断ち切って相手にすべてを託そうとする潔さと、身のはかなさを知る心細さとが同居している。
露に寄せる一連の歌の結びで、本巻の第二千六百八十九首と同じく「朝露の」「我が身」を詠む。そちらでは老いても若返って待つと誓い、本歌では身のすべてを相手に任せると言っており、はかない身をどう生きるかを別の角度から詠み分けている。前歌のためらう女に対し、本歌の女は心を決めている点でも対照的である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「かにかくに」は、あれこれとの意である。さまざまに思い迷うさまを表している。
二句「物は思はじ」は、物思いはするまいの意である。「じ」は打消意志の助動詞で、ここで句切れとなる。
三句「朝露の」は、朝露のようにの意で、はかなく消えやすいことから「我が身」を形容する比喩である。
四句「我が身ひとつは」は、我が身ひとつはの意である。ほかに頼るもののない一身であることを「ひとつ」で強め、係助詞「は」で取り立てている。
結句「君がまにまに」は、あなたの思いのままにの意である。「まにまに」は他の意志や成り行きに従うことを表す名詞で、言い切らずに体言で結ぶことで、身をゆだねる思いを余韻として残している。
まにまに:他の意志や成り行きに従うこと、思いのまま
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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白栲の我が衣手に露は置き 妹は逢はさずたゆたひにして
- 次の歌
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夕凝りの霜置きにけり朝戸出に いたくし踏みて人に知らゆな