夕凝りの霜置きにけり朝戸出に
いたくし踏みて人に知らゆな
- 歌の意味
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夕方から凝り固まった霜が置いてしまった。朝、戸を出て帰るときに、ひどく踏みつけて人に知られないでください。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2692
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
夕方から凝って降りた霜が一面に置いているので、朝帰るときに強く踏んで足跡を残し、人に知られないようにと、女が男に注意をうながす歌である。霜に残る足跡で二人の仲が知られることを恐れる、忍ぶ恋の細やかな心づかいが詠まれている。
露に寄せる一連の後に、霜に寄せる歌として置かれている。次歌は恋しい人が踏む土になりたいと詠み、「踏む」の語を共有する。本歌では踏むことで人に知られるのを恐れ、次歌では踏まれる土になりたいと願っており、踏む行為をめぐって趣向が反転している。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「夕凝りの」は、夕方から凝り固まったの意で、次の「霜」を修飾する。夜の冷え込みで固く降りた霜をいう。
二句「霜置きにけり」は、霜が置いてしまったの意である。「にけり」は完了の助動詞「ぬ」に詠嘆の「けり」が付いた形で、気づいた驚きを表し、ここで句切れとなる。
三句「朝戸出に」は、朝、戸を出て帰るときにの意である。男が女の家から帰る夜明けの別れを指している。
四句「いたくし踏みて」は、ひどく踏みつけての意である。「し」は強めの副助詞で、足跡がくっきり残ることへの心配を表している。
結句「人に知らゆな」は、人に知られないでの意である。「知らゆ」の「ゆ」は受身の助動詞、「な」は禁止の終助詞で、相手への願いを込めて言い切っている。
ゆふこり:夕方から凝り固まること
あさとで:朝、戸を出て帰ること
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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かにかくに物は思はじ朝露の 我が身ひとつは君がまにまに
- 次の歌
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かくばかり恋ひつつあらずは朝に日に 妹が踏むらむ地にあらましを