阿太人の梁打ち渡す瀬を早み
心は思へど直に逢はぬかも
- 歌の意味
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阿太の人が梁を打ち渡している瀬の流れが速いので渡れないように、心では思っていても、じかに逢うことができないことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2699
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
心の中では恋しく思っているのに、直接逢うことができないと嘆く歌である。阿太の人が梁を仕掛ける速い瀬を渡れないことに、二人を隔てる障りの大きさを重ねている。
本歌から川に寄せる歌が続き、上三句は川瀬の速さによって逢えない事情を喩える序詞となっている。阿太は大和国宇智郡の地名で、今の奈良県五條市の吉野川沿いにあたる。阿太の人々は吉野川で梁を仕掛けて鮎などを捕っていたとされる。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「阿太人の」は、阿太の人がの意である。阿太は吉野川沿いの地名で、そこに住む川漁の人々を指している。
二句「梁打ち渡す」は、梁を打ち渡すの意である。梁は川の瀬に杭を打ち並べて魚を捕らえる仕掛けである。
三句「瀬を早み」は、瀬の流れが速いのでの意である。「〜を〜み」は理由を表すミ語法である。初句からここまでが序詞で、渡れない瀬に逢えないことを重ねている。
四句「心は思へど」は、心では思っているがの意である。係助詞「は」で「心」を取り立て、逆接の接続助詞「ど」で次の句と対比させている。
結句「直に逢はぬかも」は、じかには逢わないことだの意である。「直に」は直接に、「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形で、「かも」で詠嘆を込めて結んでいる。
やな:川の瀬に杭を打ち並べて魚を捕らえる仕掛け
せ:川の浅く流れの速い所
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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行きて見て来れば恋ほしき朝香潟 山越しに置きて寐ねかてぬかも
- 次の歌
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玉かぎる岩垣淵の隠りには 伏して死ぬとも汝が名は告らじ