玉かぎる岩垣淵の隠りには
伏して死ぬとも汝が名は告らじ
- 歌の意味
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岩に囲まれた淵が隠れているように、人知れず心に秘めて、恋に伏して死のうとも、あなたの名は決して口にしない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2700
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
人に知られず心の内に恋を秘め、たとえ恋の苦しさに伏して死ぬことになっても、あなたの名は決して明かさないと誓う歌である。命をかけて恋人の名を守ろうとする、悲壮なまでの決意が詠まれている。
川に寄せる歌で、上二句は岩に囲まれた淵の姿から三句の「隠り」を導く序詞である。結句「汝が名は告らじ」は本巻の第二千六百九十六首と共通し、そちらが問い詰められても名を明かさないと詠むのに対し、本歌は死んでも明かさないと、さらに強い誓いとなっている。「玉かぎる磐垣淵の隠り」という言い回しは、巻第二の第二百七首、柿本人麻呂が妻の死を悲しんだ長歌にも見られる。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「玉かぎる」は「岩垣淵」にかかる枕詞である。玉がほのかに光る意で、ほの暗い淵の水の輝きを思わせる。
二句「岩垣淵の」は、岩が垣のように取り囲んだ淵のの意である。人目につかない深い淵を言い出し、次の「隠り」を導いている。
三句「隠りには」は、隠れたままでの意である。人に知られず心に秘めていることをいい、係助詞「は」で取り立てている。初句からの淵の比喩がここに集約される。
四句「伏して死ぬとも」は、伏して死ぬとしてもの意である。恋の苦しさに倒れ伏して死ぬことをいい、「とも」は逆接の仮定条件を表す。
結句「汝が名は告らじ」は、あなたの名は告げまいの意である。「告る」は口に出して言うこと、「じ」は打消意志の助動詞で、強い誓いを言い切っている。
いはかきふち:岩が垣のように取り囲んだ淵
こもり:隠れていること、人に知られないこと
のる:口に出して言う、告げる
- 出典
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万葉集
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阿太人の梁打ち渡す瀬を早み 心は思へど直に逢はぬかも
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明日香川明日も渡らむ石橋の 遠き心は思ほえぬかも