ま薦刈る大野川原の水隠りに
恋ひ来し妹が紐解く我れは
- 歌の意味
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真菰を刈る大野の川原の水に隠れるように、心に秘めて恋い慕ってきたあの子の紐を、私は解くのだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2703
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
真菰を刈る大野の川原の、水の中に隠れた流れのように、人知れず恋い続けてきた女性とついに結ばれる喜びを詠んだ歌である。長く忍んできた恋が実った瞬間を、「紐解く我れは」と力強く言い切って表している。
詞書の「物に寄せて思ひを陳ぶ」は、自然の景物などに託して恋の思いを述べる歌を集めた部立であり、本歌は川原の水に寄せて、忍ぶ恋を表している。前後には川や水に寄せた恋の歌が並んでいる。同じ「水隠りに」の句を持つ本巻の第二千七百七首は、逢う手立てもなく忍び続ける嘆きを詠んでおり、恋が実った本歌と対をなしている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「ま薦刈る」は、真菰を刈る、の意で、川辺の情景を描き「大野」を修飾している。「ま」は美称の接頭語である。
二句「大野川原の」は、大野の川原の、の意である。大野がどこを指すかは定かでない。初句からこの句を経て三句までが、人目につかない恋を表す景となっている。
三句「水隠りに」は、水の中に隠れて、の意で、人目を忍んで心に秘めることを表している。上の句の情景が、そのまま忍ぶ恋の比喩となっている。
四句「恋ひ来し妹が」は、恋い慕い続けてきた妻の、の意である。助動詞「き」の連体形「し」が、これまでの長い忍ぶ恋の時間を示している。
結句「紐解く我れは」は、あの子の衣の紐を私は解く、の意で、共寝をして結ばれることをいう。「我れは」を最後に置く倒置によって、喜びと誇らしさが強く表れている。
まこも:水辺に生えるイネ科の草、真菰
みごもり:水の中に隠れること。人目を忍んで心に秘めることのたとえ
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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明日香川水行きまさりいや日異に 恋のまさらばありかつましじ
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あしひきの山下響み行く水の 時ともなくも恋ひわたるかも