泊瀬川早み早瀬をむすび上げて
飽かずや妹と問ひし君はも
- 歌の意味
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泊瀬川の流れの速い早瀬の水を手ですくい上げて、「まだ飽き足りないか、お前」と尋ねたあなたは、ああ、今はどうしているのだろう。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2706
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
泊瀬川の早瀬の水を手ですくい上げながら、「飽き足りないか」と問いかけてくれた男を、女性がなつかしく思い返す歌である。かつての親しいひとときを回想し、今はそばにいない相手を慕う気持ちが「君はも」の詠嘆にこめられている。
泊瀬川の早瀬に寄せて、過ぎた日の恋人の姿を思う歌である。「飽かずや」には、すくった水を飲み飽きないかという意と、自分との逢瀬に飽きないかという意とが重なっていると読める。結句を「はも」で結ぶ形は次歌の「隠り妻はも」と共通しており、どちらも今はそばにいない恋人を思う詠嘆で終わっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「泊瀬川」は、大和国の泊瀬(現在の奈良県桜井市初瀬)を流れる川である。泊瀬は万葉集にしばしば詠まれる土地である。
二句「早み早瀬を」は、流れの速い早瀬を、の意である。「早み」と「早瀬」と「早」の音を重ねて、流れの勢いを強めている。
三句「むすび上げて」は、手のひらで水をすくい上げて、の意である。「むすぶ」は両手を合わせて水をすくうことをいう。この句は字余りである。
四句「飽かずや妹と」は、飽き足りないか、お前、と、の意である。係助詞「や」は問いかけを表し、男の親しげな言葉がそのまま引かれている。
結句「問ひし君はも」は、そう尋ねたあなたは、ああ、の意である。過去の助動詞「き」の連体形「し」が回想を示し、「はも」は今ここにいない人を思う詠嘆の助詞である。
むすぶ:両手を合わせて水をすくう
はやせ:川の流れの速い浅瀬
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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はしきやし逢はぬ君ゆゑいたづらに この川の瀬に玉裳濡らしつ
- 次の歌
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青山の岩垣沼の水隠りに 恋ひやわたらむ逢ふよしをなみ