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青山の岩垣沼の水隠りに
恋ひやわたらむ逢ふよしをなみ

歌の意味
青々と茂る山の、岩に囲まれた沼の水が隠れているように、心に秘めたまま恋い続けることになるのだろうか。逢う手立てがないので。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2707

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 木々の茂る山の、岩に囲まれた沼の水のように、人目につかないまま心に秘めて恋い続けるほかないのかと嘆く歌である。逢う手立てがないという現実が、結句で理由として示されている。
 山中の沼に寄せて忍ぶ恋を述べた歌である。本巻の第二千七百三首と同じく「水隠りに」の句を持つが、あちらが忍んだ末に結ばれる喜びを詠むのに対し、本歌は逢うことのできない嘆きを詠んでおり、同じ景を用いて明と暗の対をなしている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「青山の」は、木々が青々と茂った山の、の意である。
 二句「岩垣沼の」は、岩が垣根のように周りを囲んでいる沼の、の意である。人の近づきにくい山奥の沼を思わせる。
 三句「水隠りに」は、水が隠れていて、の意である。初句からここまでが序詞で、外から見えない沼の水のありさまを、人知れず思う恋の比喩としている。
 四句「恋ひやわたらむ」は、恋い続けることになるのだろうか、の意である。係助詞「や」と推量の助動詞「む」の連体形が係り結びをなしている。ここで句切れとなる。
 結句「逢ふよしをなみ」は、逢う手立てがないので、の意である。「なみ」は形容詞「なし」の語幹に「み」が付いて理由を表す形で、四句との倒置によって嘆きの理由を後から示している。

いはかきぬま:周りを岩が垣のように取り囲んでいる沼
よし:手段、手がかり
出典
万葉集
前の歌
泊瀬川早み早瀬をむすび上げて 飽かずや妹と問ひし君はも
次の歌
しなが鳥猪名山響に行く水の 名のみ寄そりし隠り妻はも