犬上の鳥籠の山なる不知哉川
いさとを聞こせ我が名告らすな
- 歌の意味
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犬上の鳥籠の山にある不知哉川の名のように、「さあ、知らない」とおっしゃってください。私の名を口に出さないでください。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2710
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
人に二人の仲を問われても、「さあ、知らない」と答えてほしい、決して私の名を明かさないでほしいと、相手に口止めを願う歌である。恋の噂が立つことを恐れる気持ちが、地名を用いた軽やかな序詞のうちに表されている。
川の名に寄せて思いを述べた歌で、不知哉川の「いさや」の音から、知らないととぼける意の「いさ」を導いている。巻第四の第四百八十七首にも「淡海路の鳥籠の山なる不知哉川」と同じ上の句を持つ歌があり、この地名の取り合わせが広く親しまれていたことがうかがえる。また『古今和歌集』の墨滅歌には、川の名を「なとり川」とした、ほぼ同じ趣の歌が収められている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「犬上の」は、近江国犬上郡の、の意である。現在の滋賀県彦根市付近にあたる。
二句「鳥籠の山なる」は、鳥籠の山にある、の意である。鳥籠の山は犬上郡にあった山で、「なる」は存在を表す助動詞「なり」の連体形である。
三句「不知哉川」は、鳥籠の山のあたりを流れる川の名で、彦根市付近の川とされる。初句からここまでが序詞で、「いさや」の音から四句の「いさ」を導いている。
四句「いさとを聞こせ」は、「さあ、知らない」とおっしゃってください、の意である。「を」は間投助詞、「聞こせ」は「言ふ」の尊敬語「聞こす」の命令形である。
結句「我が名告らすな」は、私の名を口に出さないでください、の意である。「告らす」は「告る」に尊敬の「す」が付いた形で、「な」は禁止を表している。
きこす:「言ふ」の尊敬語。おっしゃる
のる:口に出して言う、告げる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我妹子に我が恋ふらくは水ならば しがらみ越して行くべく思ほゆ
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奥山の木の葉隠りて行く水の 音聞きしより常忘らえず