奥山の木の葉隠りて行く水の
音聞きしより常忘らえず
- 歌の意味
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奥山の木の葉に隠れて流れて行く水の音のように、あなたの噂を聞いてからというもの、いつも忘れられない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2711
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
奥山の木の葉の陰をひそかに流れる水の音のように、ほのかに噂を聞いただけの相手が、それ以来いつも心から離れないと詠んだ歌である。まだ逢ったこともない人への思いが、聞こえてくる水音に重ねられている。
山中の流れに寄せた歌で、姿の見えない水の「音」から、評判、噂の意の「音」を導いている。本巻の第二千七百十八首も同じく水の音を序とするが、あちらは恋を「音には立てじ」と秘める決意を詠んでおり、噂を聞く側の本歌と、噂を立てまいとする側のあちらとが対をなしている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「奥山の」は、人里から遠く離れた奥深い山の、の意である。
二句「木の葉隠りて」は、木の葉に隠れて、の意である。木の葉の陰に流れが見えない様子を描き、噂だけが伝わって相手の姿は見えないことを思わせている。
三句「行く水の」は、流れて行く水の、の意である。初句からここまでが序詞で、四句の「音」を導いている。
四句「音聞きしより」は、噂を聞いてから、の意である。「音」は水音と、人の評判、噂とを掛けている。「しより」は、~してからというもの、の意である。
結句「常忘らえず」は、いつも忘れられない、の意である。「え」は可能を表す助動詞「ゆ」の未然形で、打消の「ず」と合わせて、忘れようとしても忘れられないことを表している。
おと:音のほか、人の評判、噂の意。ここでは水音と噂とを掛ける
おくやま:人里から遠く離れた奥深い山
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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犬上の鳥籠の山なる不知哉川 いさとを聞こせ我が名告らすな
- 次の歌
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言急くは中は淀ませ水無川 絶ゆといふことをありこすなゆめ