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言急くは中は淀ませ水無川
絶ゆといふことをありこすなゆめ

歌の意味
人の噂がうるさいのなら、しばらく間は途絶えさせてもよい。けれども水無川のように、絶えるということは決してあってくれるな。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2712

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 人の噂がうるさい間は逢う間を淀ませてもかまわないが、二人の仲が絶えることだけは決してあってほしくないと、相手に念を押す歌である。噂を避けるための我慢は受け入れながら、仲が途絶えることへの不安を強い禁止の言葉で表している。
 川の流れに寄せた歌で、水の流れが淀むこと、絶えることを、二人の仲の途絶えに重ねている。前歌が噂を耳にして恋が始まる歌であるのに対し、本歌は噂のために逢えなくなる恋を詠んでおり、噂をめぐる歌が続いている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「言急くは」は、人の噂がうるさいときは、の意である。「言」は人の口、噂をいう。
 二句「中は淀ませ」は、二人の間は淀ませてもよい、の意である。川の流れが淀むように、しばらく逢うことを控えることをいう。ここで句切れとなる。
 三句「水無川」は、水が地下を流れて表面に水の見えない川のことで、「絶ゆ」にかかる枕詞である。
 四句「絶ゆといふことを」は、絶えるということを、の意である。川の水が絶える意と、二人の仲が絶える意とを重ねている。この句は字余りである。
 結句「ありこすなゆめ」は、決してあってくれるな、の意である。「こす」は希望を表す助動詞で、禁止の「な」と合わせて、~してくれるな、の意となる。「ゆめ」は、決して、の意で、倒置によって強く念を押している。

みなしがは:水が地下を流れて表面に水の見えない川。「絶ゆ」にかかる枕詞となる
こと:人の言葉、噂
出典
万葉集
前の歌
奥山の木の葉隠りて行く水の 音聞きしより常忘らえず
次の歌
明日香川行く瀬を早み早けむと 待つらむ妹をこの日暮らしつ