高山ゆ出で来る水の岩に触れ
砕けてぞ思ふ妹に逢はぬ夜は
- 歌の意味
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高い山から流れ出て来る水が岩に当たって砕けるように、心も砕けるほどに思い悩む。あの子に逢わない夜は。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2716
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
高い山から流れ出る水が岩にぶつかって砕け散るように、恋しい女性に逢えない夜は心が千々に砕けるほど思い悩むと詠んだ歌である。激しい水の動きを心の乱れに重ね、恋の苦しさを力強く表している。
山の水に寄せて思いを述べた歌で、岩に砕ける水しぶきを、恋に乱れる心の比喩としている。後の『詞花和歌集』に入り『小倉百人一首』にも採られた源重之の「風をいたみ岩打つ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな」にも、砕けて物を思うという同じ発想が見られる。本巻の第二千七百十八首も「高山の」で始まり、高い山から流れ下る水に寄せる歌が続いている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「高山ゆ」は、高い山から、の意である。「ゆ」は起点を表す格助詞である。
二句「出で来る水の」は、流れ出て来る水が、の意である。
三句「岩に触れ」は、岩にぶつかって、の意である。初句からここまでが序詞で、水が岩に当たって砕ける様子から四句の「砕け」を導いている。
四句「砕けてぞ思ふ」は、心が砕けるほどに思い悩む、の意である。係助詞「ぞ」を受けて、動詞「思ふ」の連体形で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
結句「妹に逢はぬ夜は」は、あの子に逢わない夜は、の意である。四句との倒置によって、思い悩む時を後から示している。この句は字余りである。
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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神なびの打廻の崎の岩淵の 隠りてのみや我が恋ひ居らむ
- 次の歌
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朝東風にゐで越す波の外目にも 逢はぬものゆゑ瀧もとどろに