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我妹子が笠のかりての和射見野に
我れは入りぬと妹に告げこそ

歌の意味
いとしい妻の笠のかりての輪という、その和射見野に私は入ったと、妻に告げてほしい。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2722

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 旅の途中で和射見野にさしかかった男が、自分がここまで来たことを家で待つ妻に伝えてほしいと願う歌である。遠く離れた妻を思う旅の歌であり、妻の笠という身近な物から地名を言い起こすことで、旅先でも妻を忘れない心を表している。
 妻の笠に寄せて思いを述べた歌であり、旅にあって家の妻を思う羇旅の性格を持っている。和射見野は美濃国不破郡、今の岐阜県関ケ原町付近の野とされ、和射見が原の名で巻第二の第百九十九首、柿本人麻呂の高市皇子への挽歌にも見える地名である。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「我妹子が」は、いとしい妻の、の意である。
 二句「笠のかりての」は、笠のかりての、の意である。「かりて」は笠の紐を通す輪のことかとされるが、確かではない。初句からここまでが序詞で、「輪」の音から三句の「和射見野」を導くとされる。
 三句「和射見野に」は、和射見野に、の意で、美濃国の関ケ原付近の野とされる。
 四句「我れは入りぬと」は、私は入ったと、の意である。完了の助動詞「ぬ」が、旅がここまで進んだことを示している。
 結句「妹に告げこそ」は、妻に告げてほしい、の意である。「こそ」は他に対する願望を表す助詞で、誰かに妻への言づてを頼んでいる。

わぎもこ:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
かりて:笠の紐を通す輪か。語義は未詳
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
出典
万葉集
前の歌
玉藻刈るゐでのしがらみ薄みかも 恋の淀める我が心かも
次の歌
あまたあらぬ名をしも惜しみ埋れ木の 下ゆぞ恋ふるゆくへ知らずて