秋風の千江の浦廻の木屑なす
心は寄りぬ後は知らねど
- 歌の意味
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秋風の吹く千江の浦辺に寄せられる木屑のように、私の心はあなたに寄ってしまった。後のことはわからないけれど。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2724
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
秋風に吹き寄せられて浦辺に集まる木屑のように、自分の心はすっかり相手に寄ってしまった、この先どうなるかはわからないけれども、と詠んだ恋の歌である。抗うことのできない心の傾きと、先行きへの不安とを一首の中に併せて表している。
物に寄せて思ひを陳ぶ歌のうち、本歌から海辺の景物、とくに浦や波に寄せた歌が続いて並べられている。本歌は波間に漂って岸に寄る木屑に寄せた歌である。前歌の「ゆくへ知らずて」と本歌の「後は知らねど」は、ともに恋の行く末の見えなさをいう点で対応している。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「秋風の」は、秋風の吹く、の意で次の「千江の浦廻」を修飾している。原文は「冷風」と書いてアキカゼと読ませている。
二句「千江の浦廻の」は、千江の浦の湾曲した浦辺の、の意である。千江の浦の所在ははっきりしない。
三句「木屑なす」は、木屑のように、の意である。初句からここまでが序詞となり、波風に吹き寄せられる木屑の姿から「寄る」を導いている。
四句「心は寄りぬ」は、心はすっかり寄ってしまった、の意である。「ぬ」は完了の助動詞で、ここで句切れとなる。
結句「後は知らねど」は、後のことはわからないけれど、の意である。「ねど」は打消の助動詞「ず」の已然形に接続助詞「ど」が付いた形で、四句と倒置の関係にあり、心を寄せながらも残る不安を添えている。
うらみ:入り江の湾曲したあたり、浦辺
こつみ:水に浮かび、波に寄せられる木くずやごみ
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あまたあらぬ名をしも惜しみ埋れ木の 下ゆぞ恋ふるゆくへ知らずて
- 次の歌
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白真砂御津の埴生の色に出でて 言はなくのみぞ我が恋ふらくは