酢蛾島の夏身の浦に寄する波
間も置きて我が思はなくに
- 歌の意味
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菅島の夏身の浦に寄せる波のように、間を置いて私が思っているわけではないのに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2727
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
菅島の夏身の浦に寄せる波は間を置いて寄せるが、自分は間を置いて思っているのではない、絶えず思っているのに、と訴えた恋の歌である。打ち返す波の合間を逆手にとって、途切れることのない恋心を強調している。
物に寄せて思ひを陳ぶ歌として、浦に寄せる波に寄せた歌である。波の「間」を取り上げる趣向は、本巻の第二千七百三十六首と第二千七百三十七首の「間なく」、第二千七百四十一首の「間あらむ」へと続き、波の絶え間の有無によって恋の深さを言う歌が一群をなしている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「酢蛾島の」は、菅島の、の意である。三重県鳥羽市の菅島とする説が有力で、原文は「酢蛾嶋」と書いている。
二句「夏身の浦に」は、夏身の浦に、の意である。菅島にある浦と見られるが、所在ははっきりしない。
三句「寄する波」は、打ち寄せる波、の意である。初句からここまでが序詞となり、寄せては引く波の合間から「間」を導いている。
四句「間も置きて」は、間を置いて、の意である。係助詞「も」によって、少しでも間を置くことを取り立てて打ち消す形になっている。
結句「我が思はなくに」は、私は思っているわけではないのに、の意である。「なくに」は打消の助動詞「ず」のク語法に助詞「に」が付いた形で、絶えず思っているという訴えを詠嘆を込めて言いさしている。
おく:間を隔てる、間をあける
- 出典
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万葉集
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風吹かぬ浦に波立ちなき名をも 我れは負へるか逢ふとはなしに
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近江の海沖つ島山奥まへて 我が思ふ妹が言の繁けく