牛窓の波の潮騒島響み
寄そりし君は逢はずかもあらむ
- 歌の意味
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牛窓の波の潮騒が島に鳴り響くように、騒がしく噂で私と結びつけられたあなたは、逢わずに終わってしまうのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2731
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
牛窓の潮騒が島じゅうに響くほど世間で噂され、自分と結びつけられたあの人なのに、このまま逢わずに終わるのだろうか、と不安を訴えた恋の歌である。噂ばかりが大きく、実際の逢瀬が伴わないもどかしさを表しており、女性の立場の歌とも見られている。
物に寄せて思ひを陳ぶ歌として、牛窓の潮騒に寄せた歌である。「寄そりし」は噂によって関係づけられた意で、本巻の第二千七百二十九首の「寄すとも」と同じく噂の「寄す」を詠んでいる。前歌の、逢わない相手との噂の高さを嘆く歌と対になるように、噂が立ちながら逢えない嘆きが続けられている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「牛窓の」は、牛窓の、の意である。牛窓は岡山県瀬戸内市の地名で、瀬戸内海の港として知られた。
二句「波の潮騒」は、潮が満ちてくる時の波のざわめき、の意である。
三句「島響み」は、島に鳴り響いて、の意である。初句からここまでが序詞となり、島に響くほどの騒がしさから、噂の立つさまを表して「寄そりし」を導いている。
四句「寄そりし君は」は、噂で私と結びつけられたあなたは、の意である。「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
結句「逢はずかもあらむ」は、逢わないでしまうのだろうか、の意である。係助詞「かも」を受けて推量の助動詞「む」の連体形「あらむ」で結ぶ係り結びとなり、疑いと不安を表している。
しほさゐ:潮が満ちてくる時に波が立ち騒ぐこと、その音
とよむ:鳴り響く
よそる:人の噂で関係づけられる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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紀の海の名高の浦に寄する波 音高きかも逢はぬ子ゆゑに
- 次の歌
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沖つ波辺波の来寄る佐太の浦の このさだ過ぎて後恋ひむかも