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風をいたみいたぶる波の間なく
我が思ふ君は相思ふらむか

歌の意味
風が激しいので荒れ立つ波のように、絶え間なく私が思っているあなたは、私を同じように思ってくれているだろうか。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2736

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 激しい風に荒れ立つ波が絶え間なく寄せるように、絶えず思い続けているあの人は、自分のことを同じように思ってくれているだろうか、と相手の心をはかりかねた恋の歌である。自分の思いの激しさと、相手の心の見えない不安とを対比させている。女性の立場の歌とも見られている。
 物に寄せて思ひを陳ぶ歌として、風に荒れる波に寄せた歌である。三句の「間なく」は次歌の三句と同じ句であり、波を序として「間なく」を導く同じ構成の歌が二首並べられている。本巻の第二千七百二十七首の「間も置きて我が思はなくに」とも同じ心を詠んでいる。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「風をいたみ」は、風が激しいので、の意である。「〜を〜み」は原因や理由を表す語法である。
 二句「いたぶる波の」は、激しく揺れ動く波の、の意である。初句の「いたみ」と「いたぶる」とが同じ音で響き合っている。初句からここまでが序詞となり、絶え間なく立つ波から「間なく」を導いている。
 三句「間なく」は、絶え間なく、の意である。次歌の三句と同じ句で、序詞から恋の心へと転じる要となっている。
 四句「我が思ふ君は」は、私が思っているあなたは、の意である。係助詞「は」によって相手を取り立てている。
 結句「相思ふらむか」は、私と同じように思ってくれているだろうか、の意である。「らむ」は現在推量の助動詞、「か」は疑問の助詞で、相手の心を推しはかる不安を表している。

いたぶる:激しく揺れ動く、荒れ立つ
あひおもふ:互いに思い合う
出典
万葉集
前の歌
住吉の岸の浦廻にしく波の しくしく妹を見むよしもがも
次の歌
大伴の御津の白波間なく 我が恋ふらくを人の知らなく