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大船の艫にも舳にも寄する波
寄すとも我れは君がまにまに

歌の意味
大船の艫にも舳にも寄せる波のように、人が私を誰と言い寄せて噂しても、私はあなたの心のままに従う。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2740

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 大船の艫にも舳にも波が寄せるように、世間があれこれと自分を誰かに言い寄せて噂しても、自分はただあなたの心のままである、と詠んだ恋の歌である。噂に揺らぐことなく相手に身を任せようとする一途な心を表しており、女性の立場の歌と見られている。
 物に寄せて思ひを陳ぶ歌として、大船に寄せる波に寄せた歌である。四句の「寄すとも」は、本巻の第二千七百二十九首の「よしも寄すとも」と同じく、人と人とを噂で結びつける意の「寄す」を詠んでおり、噂を恐れない心を述べる点でも通じ合っている。「大船の」で始まる点は第二千七百三十八首と同じであり、前の歌では恋に揺れる心を、本歌では揺るがない心を詠んでいる。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「大船の」は、大きな船の、の意である。
 二句「艫にも舳にも」は、船の後ろにも前にも、の意である。艫は船尾、舳は船首をいい、あちらからもこちらからも、という含みを持たせている。
 三句「寄する波」は、打ち寄せる波、の意である。初句からここまでが序詞となり、同じ語の「寄す」を導いている。
 四句「寄すとも我れは」は、人が言い寄せて噂しても私は、の意である。「寄す」は人と人とを関係づけて噂する意で、「とも」は逆接仮定の接続助詞である。係助詞「は」によって、噂する人々に対して自分を取り立てている。
 結句「君がまにまに」は、あなたの心のままに、の意である。「まにまに」は、〜に従って、〜のままに、の意の名詞で、述語を言わずに名詞で言いさすことにより、相手にすべてを委ねる心を言い切っている。

とも:船の後部、船尾、艫
へ:船の前部、船首、舳
よす:人と人とを関係づけて噂する
まにまに:他のものの意志や成り行きに従うさま、〜のままに
出典
万葉集
前の歌
みさご居る沖つ荒礒に寄する波 ゆくへも知らず我が恋ふらくは
次の歌
大海に立つらむ波は間あらむ 君に恋ふらくやむ時もなし