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大海に立つらむ波は間あらむ
君に恋ふらくやむ時もなし

歌の意味
大海に立っているだろう波には絶え間もあるだろう。しかしあなたを恋しく思うことはやむ時もない。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2741

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 大海に立っている波にもときには絶え間があるだろうが、あなたを恋い慕う思いはやむ時もない、と詠んだ恋の歌である。広い海の波と比べて、それにもまさって絶え間のない恋心を強く訴えている。
 物に寄せて思ひを陳ぶ歌として、大海の波に寄せた歌である。序詞によって波から恋へ転じる前の歌々とは異なり、本歌は波と恋とを並べて比べ、波の方には「間あらむ」と絶え間を認めることで、恋の絶え間のなさを際立たせている。本巻の第二千七百三十六首と第二千七百三十七首では波の「間なく」に恋をなぞらえていたのに対し、本歌は波にさえ間があると反転させている。また結句の「やむ時もなし」は、第二千七百三十八首の「我が恋やまむ」という問いに答えるような句である。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「大海に」は、大海に、の意である。広い海を持ち出すことで、波の大きさと絶え間のなさを思わせている。
 二句「立つらむ波は」は、立っているだろう波は、の意である。「らむ」は目の前にない現在の事柄を推量する助動詞で、遠い大海の波を思いやっている。係助詞「は」によって、恋と対比するものとして波を取り立てている。
 三句「間あらむ」は、絶え間もあるだろう、の意である。「む」は推量の助動詞で、ここで句切れとなる。波には間があるとすることで、下の句との対比を生んでいる。
 四句「君に恋ふらく」は、あなたに恋していることは、の意である。「恋ふらく」は「恋ふ」のク語法で、名詞のように主語となっている。
 結句「やむ時もなし」は、やむ時もない、の意である。係助詞「も」によって、少しの間もやまないことを強めて言い切っている。

おほうみ:広々とした海、大海
ま:物と物との間、時間の絶え間
やむ:絶える、終わる
出典
万葉集
前の歌
大船の艫にも舳にも寄する波 寄すとも我れは君がまにまに
次の歌
志賀の海人の煙焼き立て焼く塩の 辛き恋をも我れはするかも