鱸取る海人の燈火外にだに
見ぬ人ゆゑに恋ふるこのころ
- 歌の意味
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鱸を取る海人の漁火を遠くから眺めるように、よそながらにさえ見たことのない人のために恋い焦がれているこのごろだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2744
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
遠くからでさえ見たことのない人に恋をしている、このごろの自分を詠んだ恋の歌である。噂に聞くだけの相手への思いの募りを、夜の海にともる漁火に寄せて表している。
鱸を取る海人の燈火という海辺の景を序として用いた寄物陳思の歌である。前の二首に続いて海人を詠んでおり、海人の暮らしの一場面が恋の思いを導く形となっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「鱸取る」は、鱸を取る、の意で、夜に火をともして鱸を取る漁のさまをいう。
二句「海人の燈火」は、漁をする海人がともす漁火である。初句からここまでが序詞で、漁火を遠くから眺めることから三句の「外に」を導いている。
三句「外にだに」は、よそながらにさえ、の意である。副助詞「だに」は、せめてこれだけでもという最小限のことを示す。
四句「見ぬ人ゆゑに」は、見たことのない人のために、の意である。「ゆゑに」は原因を表し、遠くからさえ見ない相手であることを強調している。
結句「恋ふるこのころ」は、恋い慕っているこのごろだ、の意で、体言止めによって今の切ない状態を言い留めている。
すずき:海や河口に住む魚。夜に火をともして取ることがあった
ともしび:ともした火。ここでは漁火
よそ:遠く離れたところ。直接関わらない立場
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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なかなかに君に恋ひずは縄の浦の 海人にあらましを玉藻刈る刈る
- 次の歌
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港入りの葦別け小舟障り多み 我が思ふ君に逢はぬころかも