庭清み沖へ漕ぎ出る海人舟の
楫取る間なき恋もするかも
- 歌の意味
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海面が穏やかなので沖へ漕ぎ出してゆく海人の舟が楫を取る手を休める間もないように、絶え間のない恋をすることだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2746
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
少しの休みもない絶え間のない恋をしていることを詠んだ歌である。凪いだ海へ漕ぎ出した海人が休みなく楫を操るさまに、片時も途切れない恋心を重ねている。
海人舟という物に寄せて思いを述べる寄物陳思の歌で、前歌の葦別け小舟に続いて舟を序に用いている。前歌が舟の進みにくさを恋の障りに喩えたのに対し、本歌は穏やかな海で休みなく漕ぐ舟を恋の絶え間なさに喩えており、同じ舟を別の趣向で用いた対をなしている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「庭清み」は、海面が穏やかなので、の意である。「庭」はここでは漁をする海の面をいい、「清み」は形容詞の語幹に「み」が付いて理由を表すミ語法である。
二句「沖へ漕ぎ出る」は、沖に向かって漕ぎ出してゆく、の意である。
三句「海人舟の」は、海人の乗る舟である。初句からここまでが序詞で、休みなく楫を操ることから四句の「楫取る間なき」を導いている。
四句「楫取る間なき」は、楫を取る手を休める間もない、の意である。序の舟の情景をそのまま受けつつ、恋の絶え間なさをいう言葉へと転じている。
結句「恋もするかも」は、そのような恋もすることだ、の意である。係助詞「も」で恋を取り立て、終助詞「かも」で詠嘆を込めて結んでいる。
には:ここでは漁をする海の面
かぢ:舟を漕ぐ道具。櫓や櫂の類
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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港入りの葦別け小舟障り多み 我が思ふ君に逢はぬころかも
- 次の歌
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あぢかまの塩津をさして漕ぐ船の 名は告りてしを逢はざらめやも