あぢかまの塩津をさして漕ぐ船の
名は告りてしを逢はざらめやも
- 歌の意味
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あぢかまの塩津を目指して漕ぐ船の名のように、名はもう告げてしまったのだから、逢わないでいることがあろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2747
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
名を告げ合ったのだから、逢わずにいることなどあろうか、と恋の成就を確信する歌である。古代には名を明かすことが相手に心を許すしるしとされ、その重みを踏まえて逢うことへの強い期待を表している。
塩津を目指して漕ぐ船を序に用いた寄物陳思の歌で、前の二首に続いて舟が詠まれている。塩津は琵琶湖の北端の港で、湖上を行き交う船の景が恋の思いを導いている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「あぢかまの」は、「塩津」にかかる語であるが、その意味やかかり方は明らかでなく、地名とも枕詞ともいわれる。
二句「塩津をさして」は、塩津を目指して、の意である。塩津は琵琶湖の北岸の港で、北陸へ向かう人や物資が行き交う地であった。
三句「漕ぐ船の」は、漕いでゆく船の、の意である。初句からここまでが序詞で、船の「名」から四句の「名は告りてし」を導くとされる。
四句「名は告りてしを」は、名はもう告げてしまったのに、の意である。名を告げることは相手を受け入れるしるしであった。「てし」は完了の助動詞「つ」の連用形と過去の助動詞「き」の連体形で、「を」は逆接の助詞である。
結句「逢はざらめやも」は、逢わないことがあろうか、いや必ず逢う、の意である。「めやも」は推量の助動詞「む」の已然形に反語の「や」と詠嘆の「も」が付いた形で、反語によって強い確信を表している。
しほつ:琵琶湖の北岸にあった港の名
のる:告げる。名を明かす
- 出典
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万葉集
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庭清み沖へ漕ぎ出る海人舟の 楫取る間なき恋もするかも
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大船に葦荷刈り積みしみみにも 妹は心に乗りにけるかも