- 歌の意味
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駅路で引き舟を渡して人がまっすぐに乗るように、ひたすらに、いとしい人は私の心に乗りかかってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2749
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
恋しい人がまっすぐに心に乗り込んできて、離れなくなったことを詠んだ恋の歌である。官道の渡し場で引き舟にまっすぐ乗り込む様子に、一途に心を占める恋人の存在を重ねている。
駅路の引き舟という物に寄せた寄物陳思の歌で、前歌と同じ下二句「妹は心に乗りにけるかも」を持つ。前歌が荷をぎっしり積む様子から「しみみに」を導いたのに対し、本歌は渡し舟にまっすぐ乗る様子から「直乗りに」を導いており、序を替えて同じ思いを詠んだ一対の歌である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「駅路に」は、駅路で、の意である。駅路は駅馬の通う官道で、川を渡る所には渡し舟が置かれた。
二句「引き舟渡し」は、綱で引く舟を渡して、の意である。初句からここまでが序詞で、旅人がその舟にまっすぐ乗ることから三句の「直乗りに」を導いている。
三句「直乗りに」は、まっすぐに乗るように、ひたすらに、の意である。序の舟に乗る様子から、心に乗る恋人へと意味が移っている。
四句「妹は心に」は、いとしい人は私の心に、の意で、前歌と同じ句である。
結句「乗りにけるかも」は、乗りかかってしまったことだ、の意で、前歌と同じ結句である。三句の「直乗り」と「乗り」の語を重ね、序の舟と心に乗る恋人とを結びつけている。
はゆまぢ:駅馬の通う官道
ひきふね:綱で引いて動かす舟
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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大船に葦荷刈り積みしみみにも 妹は心に乗りにけるかも
- 次の歌
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我妹子に逢はず久しもうましもの 安倍橘の苔生すまでに