我妹子を聞き都賀野辺のしなひ合歓木
我れは忍びず間なくし思へば
- 歌の意味
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いとしい人の噂を聞き継ぐという都賀野のほとりの、しなやかな合歓の木、そのしなひのように、私は忍ぶことができない。絶え間なく思っているので。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2752
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
絶え間なく恋人を思っているので、もはや思いを忍びこらえることができないと詠んだ恋の歌である。野辺にしなやかに枝を垂れる合歓の木を序に用い、抑えきれない恋心を表している。
合歓木という物に寄せた寄物陳思の歌で、前歌の松に続いて樹木が詠まれている。合歓木は夜になると葉を閉じ合わせる木で、万葉集では恋の歌に詠まれることのある木である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「我妹子を」は、いとしい人のことを、の意である。二句の「聞き」に続いて、恋人の噂を聞き継ぐことをいい、「継ぐ」と同じ音の「都賀」を引き出している。
二句「聞き都賀野辺の」は、聞き継ぐという都賀野のほとりの、の意である。都賀野の所在は明らかでない。
三句「しなひ合歓木」は、しなやかに枝を垂れた合歓の木である。初句からここまでが序詞で、「しなひ」と「しのび」の音の類似によって四句の「忍びず」を導くとされる。
四句「我れは忍びず」は、私は思いを忍ぶことができない、の意である。ここで句切れとなり、結句と倒置の関係にある。
結句「間なくし思へば」は、絶え間なく思っているので、の意である。「し」は強意の副助詞で、「思へば」は已然形に「ば」が付いて理由を表し、忍べない訳を後から述べている。
ねぶ:合歓の木。夜に葉を閉じる
しなふ:しなやかにたわむ
しのぶ:思いをこらえて表に出さない
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あぢの住む渚沙の入江の荒礒松 我を待つ子らはただ独りのみ
- 次の歌
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波の間ゆ見ゆる小島の浜久木 久しくなりぬ君に逢はずして