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我妹子に恋つつあらずは刈り薦の
思ひ乱れて死ぬべきものを

歌の意味
我妹子に恋い続けてなどいないで、刈り取った薦のように思い乱れて、いっそ死んでしまえばよいものを。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2765

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 いとしい人を恋い続けて苦しむくらいなら、いっそ思い乱れて死んでしまったほうがよいと嘆く歌である。報われない恋の苦しさに耐えかねた心が、極端な言葉で率直に吐き出されている。
 前歌の第二千七百六十四首と三句以下が同じで、前歌が妹のために命を残すと詠んだのに対し、本歌は恋い続けるよりは死んだほうがましだと詠む。同じ下の句が上の句によって正反対の思いを表すことになり、二首並べて味わうと恋の心の揺れがよくわかる。「恋ひつつあらずは」と死を願う形は、巻第二の第八十六首、磐姫皇后の「かくばかり恋ひつつあらずは高山の岩根しまきて死なましものを」にも見え、万葉集の恋の歌に通じる型である。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「我妹子に」は、いとしい妻にの意である。「我妹子」は男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語で、恋の相手をまず示している。
 二句「恋つつあらずは」は、恋い続けてなどいないでの意である。「つつ」は継続、「ずは」は打消の「ず」に係助詞「は」が付いた形で、そうしているくらいならと、望ましくない状態を退ける働きをしている。
 三句「刈り薦の」は、刈り取った薦が乱れやすいことから「乱る」にかかる枕詞である。前歌と同じ句で、薦の姿を心の乱れに重ねている。
 四句「思ひ乱れて」は、思いが乱れての意である。恋の苦しさに心が千々に乱れるさまを表している。
 結句「死ぬべきものを」は、いっそ死んでしまえばよいものをの意である。「べし」は当然、適当の助動詞、「ものを」は詠嘆を込めた逆接で、死を願うほどの恋の苦しさを強く訴えて結んでいる。

わぎもこ:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
こも:水辺に生える草、真菰。筵などに編む
出典
万葉集
前の歌
妹がため命残せり刈り薦の 思ひ乱れて死ぬべきものを
次の歌
三島江の入江の薦を刈りにこそ 我れをば君は思ひたりけれ