三島江の入江の薦を刈りにこそ
我れをば君は思ひたりけれ
- 歌の意味
-
三島江の入江の薦を刈る、その「かり」のように、ほんの仮初めの相手として、あなたは私を思っていたのだった。
- 鑑賞
-
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2766
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
あなたは私のことを、ほんの仮初めの相手としか思っていなかったのだと、男の心に気づいた女が恨みを込めて詠んだ歌である。三島江の入江で薦を刈る情景から「刈り」と「仮」を言い掛け、遊ばれていたと知った女の嘆きを鋭く表している。
前の二首に続いて薦に寄せる歌である。前二首が刈り薦の乱れを心の乱れに重ねたのに対し、本歌では薦を刈る「刈り」が「仮」に転じ、同じ薦が男の不実を言う材料となっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「三島江の」は、摂津国三島の、淀川沿いの入江をいう地名である。薦の生い茂る水辺として知られ、歌の舞台を示している。
二句「入江の薦を」は、入江に生える薦をの意である。初句からここまでが序詞で、薦を刈ることから次の「刈り」を導いている。
三句「刈りにこそ」は、薦を刈る「刈り」と、仮初めの意の「仮」との掛詞である。係助詞「こそ」が置かれ、結句の已然形「けれ」と係り結びをなしている。
四句「我れをば君は」は、私のことをあなたはの意である。「をば」は目的語を取り立てる言い方で、我が身を軽く扱われたことへの思いがにじんでいる。
結句「思ひたりけれ」は、思っていたのだったの意である。「たり」は存続、「けり」は今になって気づいた詠嘆を表し、三句の「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ばれている。
こも:水辺に生える草、真菰。筵などに編む
かり:薦を刈る意と、仮初めの意の仮を掛ける
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
我妹子に恋つつあらずは刈り薦の 思ひ乱れて死ぬべきものを
- 次の歌
-
あしひきの山橘の色に出でて 我は恋なむを人目難みすな