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神奈備の浅小竹原のうるはしみ
我が思ふ君が声のしるけく

歌の意味
神奈備の浅篠原が美しいように、立派だと私が思うあなたの声の、なんとはっきりと聞こえることか。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2774

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 慕わしく思うあなたの声が、ほかの人の声にまぎれずはっきりと聞き分けられることよと詠んだ歌である。恋しい人の声だけは遠くからでもすぐにわかるという、恋する者の鋭い感覚が素直に表されている。
 前歌に続いて竹に寄せる歌で、神域の浅篠原の清らかな美しさを、慕う相手の立派さに重ねている。前歌では竹が人目から隠れることのたとえとなったが、本歌では篠原の美しさが相手を讃える言葉を導いている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「神奈備の」は、神の鎮まる山や森をいう語である。神域の清らかさを示し、続く篠原の美しさを引き立てている。
 二句「浅小竹原の」は、丈の低い篠竹の生えた原のの意で、仮名では「あさぢのはら」と訓む。初句からここまでが序詞で、その原の美しさから次の「うるはしみ」を導いている。
 三句「うるはしみ」は、立派で美しいとしての意である。形容詞「うるはし」の語幹に「み」が付いた形で、相手を讃える思いを表している。
 四句「我が思ふ君が」は、私が思い慕うあなたのの意である。八音の字余りで、相手への思いの深さをゆったりと述べている。
 結句「声のしるけく」は、声のはっきりしていることよの意である。「しるけく」は形容詞「しるし」のク語法で、体言のようにまとめて詠嘆を込めて言い終えている。

かむなび:神の鎮まる山や森
あさぢ:丈の低い篠竹
出典
万葉集
前の歌
さす竹の世隠りてあれ我が背子が 我がりし来ずは我れ恋めやも
次の歌
山高み谷辺に延へる玉葛 絶ゆる時なく見むよしもがも