- 歌の意味
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名高の浦の靡く藻が一方に寄るように、私の心はすっかり妹に寄ってしまったのに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2780
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
名高の浦の藻が波に靡いて一方に寄るように、私の心はすっかり妹に寄ってしまったのにと詠んだ歌である。「ものを」で言いさす結びに、心を寄せきっているのに思うようにならない恋のもどかしさがにじんでいる。
前歌の第二千七百七十九首に続いて靡く藻に寄せる歌である。前歌が藻の靡く姿で心のしおれるさまを表したのに対し、本歌は藻が一方に寄る姿で心が相手に寄ることを表しており、同じ靡く藻が異なる心の動きのたとえとなっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「紫の」は、紫が名高い色であることから「名高」にかかる枕詞である。高貴な色を冒頭に置き、歌に華やかさを与えている。
二句「名高の浦の」は、紀伊国の名高の浦のの意である。今の和歌山県海南市のあたりとされ、藻の靡く海辺を示している。
三句「靡き藻の」は、波に靡く藻のの意である。初句からここまでが序詞で、藻が一方に靡き寄ることから次の「寄り」を導いている。
四句「心は妹に」は、私の心は妹にの意である。「妹」は男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語で、係助詞「は」が心を取り立てている。
結句「寄りにしものを」は、寄ってしまったのにの意である。「に」は完了、「し」は過去の助動詞、「ものを」は逆接の詠嘆で、相手に応えてもらえない思いを込めて結んでいる。
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
なびきも:波に靡く藻
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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海原の沖つ縄海苔うち靡き 心もしのに思ほゆるかも
- 次の歌
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海の底奥を深めて生ふる藻の もとも今こそ恋はすべなき