海の底奥を深めて生ふる藻の
もとも今こそ恋はすべなき
- 歌の意味
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海の底の、沖深くに生える藻の「も」ではないが、以前もそうだったが、今こそ恋はどうしようもない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2781
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
前々から恋は苦しかったが、今こそどうにもならないほど苦しいと嘆く歌である。沖深くに生える藻を持ち出すことで、恋の思いの深さも暗示している。
前歌に続いて藻に寄せる歌で、波に靡く藻から、海の底深くに生える藻へと視点が移っている。藻の「も」から「もとも」へと同じ音で言葉を運ぶ技巧が用いられている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「海の底」は、海の底の意で、仮名では「わたのそこ」と訓む。「沖」にかかる枕詞としても用いられる語で、ここでは次の「奥」へと続いている。
二句「奥を深めて」は、沖の深いところにの意である。「奥」は沖のことで、深い海を示している。
三句「生ふる藻の」は、生えている藻のの意である。初句からここまでが序詞で、「藻」の「も」の音から次の「もとも」を導いている。
四句「もとも今こそ」は、以前もそうだったが、今こそはの意である。係助詞「こそ」が置かれ、結句の連体形「すべなき」と係り結びをなしている。
結句「恋はすべなき」は、恋はどうしようもないの意である。「すべなし」は手立てがない意の形容詞で、四句の「こそ」を受けて連体形で結ばれ、上代の係り結びの形を示している。
わた:海
すべ:物事を行う手段、方法
もと:以前、もともと
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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紫の名高の浦の靡き藻の 心は妹に寄りにしものを
- 次の歌
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さ寝がには誰れとも寝めど沖つ藻の 靡きし君が言待つ我れを