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山吹のにほへる妹がはねず色の
赤裳の姿夢に見えつつ

歌の意味
山吹の花のように美しく照り映える妻の、はねず色の赤い裳を着た姿が、夢に見え続けて。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2786

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 山吹の花のように輝く美しい恋人が、はねず色の赤い裳を着けた姿で、繰り返し夢に現れると詠んだ男の歌である。逢えない恋人の面影を、山吹の黄、はねずの薄紅、裳の赤という色彩の重なりによって鮮やかに描き出している。
 花に寄せる一連の歌の最後の一首で、山吹とはねずという二つの花の名を詠み込んでいる。前歌までが花に寄せて恋心そのものを詠んだのに対し、本歌は花の色を恋人の姿に重ね、夢に見る面影を詠んでいる。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「山吹の」は、山吹の花のようにの意で、輝くように美しいことを表す「にほへる」を導いている。枕詞とする見方もある。
 二句「にほへる妹が」は、照り映えるように美しい恋人がの意である。「にほふ」は色が美しく映えることをいい、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 三句「はねず色の」は、はねずの花の色のの意で、薄紅色をいう。六音の字余りである。
 四句「赤裳の姿」は、赤い裳を着た姿の意である。「裳」は女性が腰から下にまとう衣で、三句の「はねず色」とあわせて恋人の装いを色彩豊かに描いている。
 結句「夢に見えつつ」は、夢に見え続けての意である。「つつ」は反復、継続を表す接続助詞で、言いさしの形で結び、面影が繰り返し現れる余情を残している。

にほふ:色が美しく照り映える
はねず:初夏に薄紅色の花を咲かせる木。ニワウメ、モクレンなど諸説がある。またその花の色
も:女性が腰から下にまとった衣
いめ:夢
出典
万葉集
前の歌
咲く花は過ぐる時あれど我が恋ふる 心のうちはやむ時もなし
次の歌
天地の寄り合ひの極み玉の緒の 絶えじと思ふ妹があたり見つ