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息の緒に思へば苦し玉の緒の
絶えて乱れな知らば知るとも

歌の意味
命がけで思っているので苦しい。玉の緒が切れて玉が乱れ散るように、いっそ思い乱れてしまおう。人が知るなら知っても構わない。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2788

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 命の限りに思い続けるのは苦しいので、いっそ玉の緒が切れて玉が散るように思い乱れてしまおう、人に知られてもかまわないと詠んだ歌である。人目を忍ぶ恋に耐えかね、捨て身になろうとする激しい心が表れている。
 「玉の緒」に寄せる一連の歌で、前歌の「玉の緒の絶えじと思ふ」が仲の絶えないことを願ったのに対し、本歌は同じ「玉の緒の」から「絶えて乱れな」と、緒が切れて乱れることを自ら望んでおり、同じ枕詞で反転した趣向となっている。次歌も「玉の緒の絶えたる恋の乱れなば」と、絶えて乱れる恋を詠み継いでいる。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「息の緒に」は、命の限りにの意である。「息の緒」は息を長く続く緒に見立てた語で、命をいう。
 二句「思へば苦し」は、思っているので苦しいの意である。「ば」は已然形に付いて原因、理由を表し、ここで句切れとなる。
 三句「玉の緒の」は「絶え」「乱れ」にかかる枕詞である。前歌と同じく玉を貫く緒を持ち出し、緒が切れて玉が散る様子を思わせている。
 四句「絶えて乱れな」は、切れて乱れてしまおうの意である。「な」は自らの意志、願望を表す終助詞で、ここで二度目の句切れとなる。前歌の「絶えじと思ふ」と同じ「絶え」の語を用いながら、逆の思いを詠んでいる。
 結句「知らば知るとも」は、人が知るのなら知ってもかまわないの意である。「ば」は仮定、「とも」は逆接の仮定条件を表し、人目を恐れない開き直った心を示している。

いきのを:命。息を長く続く緒に見立てた語
たまのを:玉を貫き通す緒。「玉の緒の」の形で「絶ゆ」「乱る」などにかかる枕詞となる
出典
万葉集
前の歌
天地の寄り合ひの極み玉の緒の 絶えじと思ふ妹があたり見つ
次の歌
玉の緒の絶えたる恋の乱れなば 死なまくのみぞまたも逢はずして