片糸もち貫きたる玉の緒を弱み
乱れやしなむ人の知るべく
- 歌の意味
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片撚りの糸で貫いた玉の緒が弱いので切れて玉が乱れるように、私は思い乱れてしまうのだろうか。人が気づくほどに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2791
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
片撚りの弱い糸で貫いた玉の緒が切れて玉が乱れるように、自分も人に気づかれるほど思い乱れてしまうのではないかと恐れる歌である。細く弱い糸に、こらえきれずに乱れそうな自分の心のもろさを重ねている。
「玉の緒」に寄せる一連の歌で、本巻の第二千七百八十八首が「知らば知るとも」と人に知られることを恐れなかったのに対し、本歌は「人の知るべく」と人に知られることを恐れており、同じく緒が切れて乱れることを詠みながら、人目に対する心構えが反転している。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「片糸もち」は、片撚りの糸でもっての意である。「片糸」は撚り合わせていない一本の糸で、弱い糸をいう。初句から三句までが「乱れ」を導く序詞である。
二句「貫きたる玉の」は、貫き通した玉のの意である。「たる」は存続の助動詞「たり」の連体形で、玉が緒に通されている状態をいう。
三句「緒を弱み」は、緒が弱いのでの意である。「を」と形容詞の語幹「弱」に接尾語「み」が付いたいわゆるミ語法で、原因、理由を表している。弱い緒が切れて玉が乱れることから、下の「乱れ」へと続く。
四句「乱れやしなむ」は、乱れてしまうだろうかの意である。係助詞「や」が疑問を表し、推量の助動詞「む」の連体形「なむ」で結んで係り結びとなっている。「な」は強意の助動詞「ぬ」の未然形である。
結句「人の知るべく」は、人が気づくほどにの意である。「べく」は助動詞「べし」の連用形で、程度を表す。倒置によって四句の「乱れやしなむ」にかかり、人目を恐れる心を最後に添えている。
かたいと:撚り合わせていない一本の糸。弱い糸をいう
ぬく:玉などに糸や緒を通す、貫く
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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玉の緒のくくり寄せつつ末つひに 行きは別れず同じ緒にあらむ
- 次の歌
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玉の緒の現し心や年月の 行きかはるまで妹に逢はずあらむ