水くくる玉に交じれる磯貝の
片恋ひのみに年は経につつ
- 歌の意味
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水をくぐる美しい玉石に交じっている磯貝のように、片恋ばかりで年は過ぎていく。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2796
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
水の中の美しい玉石に交じる磯貝が片側だけの貝であるように、自分も片恋をしたまま年月を過ごしていると嘆いた歌である。報われない恋がいつまでも続くやるせなさを、波間の貝の姿に託している。
貝に寄せる一連の歌で、前歌の結句「年は経ぬとも」と本歌の結句「年は経につつ」とが同じ語句を共有している。前歌が年月を越えて忘れまいと誓ったのに対し、本歌は片恋のまま年月が過ぎていくことを嘆いており、同じ「年は経」の語で誓いと嘆きとが対をなす配列である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「水くくる」は、水の中をくぐるの意で、波に洗われる様子をいう。初句から三句までが「片恋」を導く序詞である。
二句「玉に交じれる」は、玉石に交じっているの意である。「玉」は水に磨かれた美しい小石をいい、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
三句「磯貝の」は、磯にある貝のようにの意である。殻が片側だけの貝であることから、「片恋」を導いている。
四句「片恋ひのみに」は、片恋ばかりでの意である。副助詞「のみ」によって、報われない恋のほかに何もないことを強めている。
結句「年は経につつ」は、年は過ぎていくばかりであるの意である。「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「つつ」は継続を表す接続助詞で、言いさしの形で結び、片恋のまま過ぎる年月への嘆きを余韻として残している。前歌の結句「年は経ぬとも」と同じ語句を共有している。
くくる:水の中をくぐる
いそかひ:磯にいる貝。殻が片側だけの貝をいう
かたこひ:片思い
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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紀の国の飽等の浜の忘れ貝 我れは忘れじ年は経ぬとも
- 次の歌
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住吉の浜に寄るといふうつせ貝 実なき言もち我れ恋ひめやも