古典和歌stream

住吉の浜に寄るといふうつせ貝
実なき言もち我れ恋ひめやも

歌の意味
住吉の浜に打ち寄せるという中身のない空の貝のように、実のない言葉で私が恋をしたりするものか。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2797

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 住吉の浜に打ち寄せるという中身の空っぽな貝のように、口先だけの実のない言葉で恋をしたりはしないと、自分の恋の真実を訴えた歌である。相手に心を疑われたことに答えて、誠実さを誓ったものとも読める。
 貝に寄せる一連の歌で、前の二首が忘れ貝や磯貝を詠んだのに続き、本歌は中身のない「うつせ貝」を取り上げている。前歌までが片恋や忘れないことを詠んだのに対し、本歌は恋の言葉の誠実さを問題にしており、同じく貝を序詞としながら趣向を変えている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「住吉の」は、住吉のの意で、現在の大阪市住吉区のあたりをいう。古くは「すみのえ」と読み、住吉の浜は万葉集にしばしば詠まれる地である。初句から三句までが「実なき」を導く序詞である。
 二句「浜に寄るといふ」は、浜に打ち寄せるというの意である。「といふ」は伝え聞いたことを表し、よく知られた住吉の浜の貝であることを示している。
 三句「うつせ貝」は、中身のなくなった空の貝殻をいう。中が空であることから、下の「実なき」を導いている。
 四句「実なき言もち」は、実のない言葉でもっての意である。「実」は貝の身の意と、真心、誠実さの意とを重ねており、口先だけの言葉をいう。
 結句「我れ恋ひめやも」は、私が恋をしたりするだろうか、いやしないの意である。「め」は推量の助動詞「む」の已然形で、「やも」が付いて強い反語となっている。

うつせがひ:中身のなくなった空の貝殻
み:貝の身。転じて中身、真実、誠意
出典
万葉集
前の歌
水くくる玉に交じれる磯貝の 片恋ひのみに年は経につつ
次の歌
伊勢の海人の朝な夕なに潜くといふ 鰒の貝の片思にして