古典和歌stream

あしひきの山鳥の尾のしだり尾の
長々し夜をひとりかも寝む

歌の意味
山鳥の垂れ下がった尾のように長い長い夜を、ひとりで寝ることになるのだろうか。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2802

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 本歌は、直前の第二千八百二首の左注に「或本の歌に曰く」として記された別伝の歌である。山鳥の長く垂れた尾のように長い長い夜を、恋しい人と離れてひとりで寝るのだろうかと、独り寝のわびしさを詠んでいる。
 本歌との異同は、本歌が初句と二句で「思へども思ひもかねつ」と心を述べてから序に入るのに対し、別伝は初句から序詞を置き、三句に「しだり尾の」を加えて尾の長さを重ねて言い、結句を「ひとりかも寝む」と独り寝の嘆きで結んでいる点である。「の」を重ねて長い尾をたどるような調べが、夜の長さそのものを感じさせる。
 この歌は『拾遺和歌集』に柿本人麻呂の作として入り、『小倉百人一首』の第三番に採られて広く知られるようになった。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「あしひきの」は「山」にかかる枕詞である。ここでは「山鳥」の「山」を導いている。
 二句「山鳥の尾の」は、山鳥の尾の、の意である。山鳥は雄の尾が長いことで知られる鳥で、本歌の四句と同じ表現である。
 三句「しだり尾の」は、長く垂れ下がった尾のように、の意である。初句からこの句までが序詞で、尾の長さから次の「長々し」を導いている。「の」を重ねた調べが特色である。
 四句「長々し夜を」は、長い長い夜を、の意である。本歌の結句「長きこの夜を」にあたり、「長々し」と重ねて夜の長さをいっそう強めている。
 結句「ひとりかも寝む」は、ひとりで寝るのだろうか、の意である。係助詞「かも」を受けて推量の助動詞「む」が連体形で結ぶ係り結びで、独り寝の嘆きを込めて言い収めている。

あしひき:「あしひきの」の形で「山」にかかる枕詞となる
しだりを:長く垂れ下がった尾
出典
万葉集
前の歌
思へども思ひもかねつあしひきの 山鳥の尾の長きこの夜を
次の歌
里中に鳴くなる鶏の呼び立てて いたくは泣かぬ隠り妻はも