伊勢の海ゆ鳴き来る鶴の音どろも
君が聞こさば我れ恋ひめやも
- 歌の意味
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伊勢の海から鳴きながら飛んで来る鶴の声のように、せめて便りだけでもあなたが聞かせてくださるなら、私がこれほど恋い焦がれることがあろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2805
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
伊勢の海から鳴き渡ってくる鶴の声のように、せめて便りだけでも聞かせてくれるなら、これほど恋に苦しむことはないのにと、音信の途絶えた恋人を恨めしく思う女の歌である。遠くまで届く鶴の声に、届かない便りを待つ心を重ねている。
鳥に寄せた歌の一連の一首で、前歌のたかべに続いて鶴を詠む。前歌が恋人の訪れを待つのに対し、本歌は訪れどころか便りさえないことを嘆いており、待つ心が一歩深まっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「伊勢の海ゆ」は、伊勢の海から、の意である。「ゆ」は起点や経由を表す上代の格助詞で、六音の字余りの句となっている。
二句「鳴き来る鶴の」は、鳴きながら飛んでくる鶴の、の意である。「鶴」は歌語で「たづ」と読む。初句とこの句が序詞で、鶴の鳴く声から次の「音」を導いている。
三句「音どろも」は語義の定まらない語であるが、音信、便りの意と解されることが多い。係助詞「も」は、せめて便りだけでもという気持ちを表している。
四句「君が聞こさば」は、あなたが聞かせてくださるなら、の意である。「聞こす」は「言ふ」の尊敬語で、ここでは便りを寄こしてくれることをいう。「ば」は未然形に付いて仮定を表す。
結句「我れ恋ひめやも」は、私が恋い焦がれようか、いや恋い焦がれはしない、の意である。「め」は推量の助動詞「む」の已然形で、「やも」と結んで反語を表し、便りのない今への恨みを込めている。
たづ:鶴の歌語
おとどろ:語義未詳。音信、便りの意と解されることが多い
きこす:「言ふ」の尊敬語。おっしゃる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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高山にたかべさ渡り高々に 我が待つ君を待ち出でむかも
- 次の歌
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我妹子に恋ふれにかあらむ沖に棲む 鴨の浮寝の安けくもなし