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我妹子に恋ひてすべなみ白栲の
袖返ししは夢に見えきや

歌の意味
恋しい人に恋してどうしようもなく、袖を折り返して寝たのは、あなたの夢に見えただろうか。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2812

詞書は前の歌に続き「問答」
 恋しい人への思いをどうすることもできず、袖を折り返して寝たが、その姿はあなたの夢に現れただろうかと、男が女に問いかける歌である。袖を折り返して寝ると恋しい人と夢で逢えるという、当時の俗信を踏まえている。
 問答の歌で、左注の「右二首」によって次歌と一組をなす。次歌では女が、あなたが袖を返した夜の夢であったらしい、本当にあなたに逢ったようだったと答えている。本歌の「袖返し」を次歌が「袖返す」と受け、問いと答えとが夢を介して結ばれている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「我妹子に」は、恋しいあなたに、の意である。「我妹子」は男が恋人を親しんで呼ぶ語で、男の歌であることがわかる。
 二句「恋ひてすべなみ」は、恋してどうしようもないので、の意である。「すべなみ」は形容詞「すべなし」の語幹に接尾語「み」が付いたミ語法で、理由を表す。
 三句「白栲の」は、白い栲の布の意から「袖」にかかる枕詞である。
 四句「袖返ししは」は、袖を折り返して寝たのは、の意である。袖を返して寝ると夢で恋人に逢えるという俗信に基づく。「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、係助詞「は」によって取り立てている。
 結句「夢に見えきや」は、夢に見えただろうか、の意である。「夢」は上代では「いめ」と読み、「き」は過去の助動詞、「や」は疑問の助詞で、相手の夢に自分が現れたかを問いかけている。

いめ:夢の上代の語形
そでかへす:袖を折り返す。袖を返して寝ると夢で恋人に逢えるとされた
出典
万葉集
前の歌
この言を聞かむとならしまそ鏡 照れる月夜も闇のみに見つ
次の歌
我が背子が袖返す夜の夢ならし まことも君に逢ひたるごとし